評者の好みを「★」の数で表してます。3つが最高。☆は半分。

「LUCKY」　Lucie,Too

「ルーシー、トゥー」は、宇都宮を拠点に活動している女性3人組バンド。本作は2018年2月リリースのミニアルバム（7曲収録）である。少し遅れたのだが、7月にはじめてライブを見る機会があり、それをきっかけに聴いてみた。
サウンドは、爽やかさが印象的なギターポップ。ガールズバンドらしいほのかに甘い歌詞とボーカルのかわいい声質の組み合わせがいいね。ベストチューンにはM3「Siesta」をあげたい。ラッキーオールドサンを思わせるリリカルなメロディーとエモーショナルなギターサウンド、そしてさらっとした歌い方。彼女たちらしい青春の輝きがこぼれているようなところに惹きつけられる。正直いって、この曲一発でファンになってしまったくらい。ライブでも聴けてうれしかった。アルバム全体は1曲あたりの演奏時間が短め。オイシイところが凝縮されていて一気に聴き通せるところもよい。 ★★（2018/10/14）

「魔法が使えたみたいだった」　にゃんぞぬデシ

天衣無縫という言葉がぴったりで、こわいもの知らずの爆発力が魅力だったデビュー作から約2年。2018年7月にリリースされた、大学生になってはじめての作品となる2ndミニアルバム（6曲収録）。
独特の楽曲や個性的な唱法は基本変わっていない。その上でサウンドはより洗練されている。若いシンガーソングライターの作品としてはクオリティーは十分高いと思う。ただ、前作を受けてハードルが上がり切った状態で聴いたせいもあるのかもしれないが、彼女の持ち味だった「意味不明ながらとにかく勢いのあるパンチラインだらけ！」みたいなエネルギーはやや薄れている印象を受けた。違う言い方をするならばキラーチューンがないというか…。「ハッピーエンド建設中」レベルの曲が1曲あったらもっとイメージが違っていたかもしれない。 ★★（2018/10/14）

「AHEAD!」　脇田もなり

12曲収録の2ndフルアルバム（2018年7月リリース）。けっこういろんな曲調が混在していた前作に対して、本作はグルーヴィーなシティ＆ダンスサウンドを軸にするという方向性を定めて、一気に走り出した盤といえるのではないだろうか。そのトータリティーは高く、全体に夜のイメージで、大人っぽさが強調されている。アイドル的な楽しさを打ち出した曲がほとんどなくなったのはやや寂しい気もするが、しっかり向き合って聴くとその内容の充実ぶりに、「これはこれであり」と思わざるをえない。彼女にとっての「AHEAD（前進）」にしっかりつきあっていこうという気にさせられる作品である。
洗練されたナンバーはどれも聴きごたえがあるが、その中で少しだけ変化をつけた曲もキラリといい味を出している。M5「愛のデカダンス」でのエレクトリックシタールの響きがかもし出す歌謡曲感にもしびれるし、M8「CUTi-BiL（くちびる）」の大人かわいいバラードにも惹きつけられる。最大のアクセントはM9「LEMON」だろう。アルバムの中でも異彩を放つ一曲であり、聴くほどにその世界ともなりさんのけだるい歌唱に心をからめとられてしまう…。この曲に限らず、本作はどれも相当な難曲ぞろいなのだが、しっかり歌いこなしていて、ソロシンガーならではの「歌声の魅力」をたっぷりと味わわせてくれる。ポップでありながら重量感もある引き締まった作品だ。 ★★☆（2018/10/14）

「桃色タイフーン」　春奈るな

2018年8月リリースのシングル（3曲収録）。表題曲はアニメ主題歌らしいスピード感のあるポップ曲。随所にちりばめられた和テイストのギミックとコミカルな歌詞が楽しいね。彼女の一連の作品の中では、何かとりわけ目新しさがあるという曲ではないけど、芝居気たっぷりの歌い方もあいまってすごくライブ映えしそう。C/W曲もそれぞれにいい仕上がり。ジャズっぽい軽快なサウンドが印象的な「恋せよ乙女」などは、こちらが表題曲でもおかしくないくらいの華やかさがある。このところなかなかタイミングがあわずライブに行けてないのだけど、どの曲もぜひステージで聴いてみたいと思わせられた。 ★★（2018/10/14）

「＋＋」　LOONA

2016年10月から約1年半かけて12人のメンバーを順次発表してきたLOONA。本作はその全メンバーそろってのはじめてのミニアルバムである（6トラック・実質5曲収録）。2018年8月リリース。
フルメンバーで歌っている！ということを視覚的にも確認できて、いやがうえにも興奮させられるのはやはりMVだろう。まず「favOriTe」、次いで「Hi High」のMVが発表された。しかし、本作では順番は逆に収録されている。
冒頭の「Hi High」は、デビューしたてのアイドルらしいフレッシュさ全開で突っ走る爽快なポップチューンだ。未来に向かって疾走するメンバーたちがまぶしい！ 続く「favOriTe」は、一転して重いビートが効いたガールクラッシュ系のカッコいいダンスナンバー。これまでソロやユニットで見てきたあの子やこの子がみんな一緒に踊ってる！ メンバー発表にたっぷり時間をかけてきたことによって、いきなり最初からオールスターユニットを見ているかのような気分が味わえる。ダークな雰囲気の中に意外にポップなメロディーが見え隠れするところもLOONAらしくて惹きつけられる。
この2曲だけでも十分満足できるのだが、本作ではさらに3曲聴ける。熱狂の後をクールダウンさせるようなソウルトロニカ…というところもこのユニットらしい。 ★★☆（2018/10/14）