評者の好みを「★」の数で表してます。3つが最高。☆は半分。

「Sweet Vinegar」　WHY＠DOLL

2018年6月リリースのシングル（2曲収録）。いきなり頭サビで始まるメロディーがとにかく強力！…というかそこがこの曲の「すべて」といっても過言ではないだろう。タイトルのイメージにも通じる爽やかで甘酸っぱいボーカルのテイストを見事に生かしている。このサビのフレーズと、それに続くイントロに相当するパートの煌めくようなシンセアレンジができた時点でもう勝負あったという感じ。手がけたのは「Awesome City Club」。2015年くらいから本格的に活動を開始したシティポップ好きには知られたユニットだそう。この起用によって、これまでのほわどるの洗練されたサウンドの流れを受け継ぎながら、さらに魅力的な新たなカラーを付け加えることに成功している。次のアルバムではこの組み合わせで何曲かまとめて聴いてみたい…そんな気持ちを抑えきれない。 ★★☆（2018/08/26）

「SEVENTEEN」　吉田凜音

2013年からソロ活動している吉田凜音さん。存在自体はけっこう前から知っていたものの音源をちゃんと聴くのは今回が初めて。本作は2018年4月リリースの5thアルバム（11曲収録）。ただしフルアルバムとしては3作目となる。
ほとんど予備知識なしで聴いたのだが、本当によくできているアルバムだなというのが第一印象。前半はいわゆるエレクトロポップ中心にまとめ、後半になるとロック、ギターポップ、ユーロ、テクノ…とバラエティーに富んだ展開となるが、全体の統一感もしっかりキープしている。それぞれのナンバーはイマドキ風でありながら、メロディアスな要素も多分に含まれていて、大人でもとても楽しく聴けるもの。そして、改めてその魅力に圧倒されたのが吉田凜音さんのボーカルとラップだった。声自体はものすごくかわいいのに、唱法には甘さや媚びがなく、確かな意思を感じさせる。そのくっきりしたコントラストが鮮やかな印象を残す。ラップパートが多いことからより重要になる歌詞も、17歳のイメージを反映したエモーショナルな表現とユーモラスな感覚のバランスの上にしっかりとオリジナルな世界を描きだしている。まさにシンガーとクリエイターの絶妙なコラボレーションだ。旧作もチェックしてみたくなった。 ★★★（2018/08/26）

「柳都芸妓」　RYUTist

2017年8月リリースの3rdアルバム（10トラック・実質9曲収録）。発表されてから一年近く経ってから改めて聴き直し、その素晴らしさにようやく気づいた作品。なんで最初から気づかないんだ！…と思われるかもしれないが、こういうことは決して珍しくはない。出会いの不思議というものだろう。
RYUTistは一作目、二作目ともにコンセプトのしっかりしたアルバムを発表してきている。本作もその延長線上にあって、これまででも最高のコンセプトアルバムになっているのではないだろうか。そのテーマは「地元・新潟に根ざしたアイドル活動を続ける自分たちのルーツの再確認」である。柳都・新潟には北前船などによって古くから都の最先端の文化やエンターテインメントが流入していた。そういった土地に伝わるショービズの伝統や心意気を今に受け継ぎ、同時に古今東西のポップミュージックの歴史や技法をバックグラウンドとして新たなアイドル音楽を生み出していく…それがRYUTistなのだと宣言しているのがこの作品なのである。
その真骨頂は、中盤に配置されたM5「古町ブギウギ通り」とM6「NEO古町小唄」の2曲だろう。圧倒的な楽しさの中に先人へのリスペクトと自らのアイデンティティーへの確信が凝縮されている。前後を固めるM4「サンディー」、M7「涙のイエスタディ」をはじめ全曲すべて良い。ソロパート、コーラスパートの的確なディレクションは、ソロでも大人数ものでもない4人組ユニットの魅力を最大限に引き出している。アルバムづくりのお手本のような一枚だ。 ★★★（2018/08/26）

「Time for the Moon Night」　GFRIEND

2018年4月リリースの6thミニアルバム（7トラック・実質6曲収録）。表題曲は切ない恋心を夜空の月星に託して歌ったマイナー調のナンバー。歌声はヨジャチングらしい爽やかなものだけど、全体的には大人っぽい雰囲気に仕上がっている。前作のリード曲だった「SUMMER RAIN」からの流れという感じ。安定している分、意外性やインパクトは少なめかなという気がした。C/W曲もダンサブルなマイナー曲が続く感じでもうひとつ印象に残らない。大きなアクセントになっているのが唯一のミディアムバラード曲「Bye」。メインボーカル陣の歌唱力の確かさがよくわかる。 ★★（2018/08/26）

「beauty＆the beat」　LOONA yyxy

12人のメンバーすべてが発表されたLOONA。その第三の（そしておそらく最後となる）派生ユニット「LOONA yyxy」は「LOONA youth youth by young」と読むようだ。メンバーは、イブ、チュウ、コウォン、オリビア・ヘの4人。本作は2018年5月リリースの1stミニアルバム（5トラック・実質4曲収録）。
リード曲は「love4eva」。メンバーのソロ曲の段階ではダークでミステリアスな雰囲気のナンバーが続いていたので、ユニット曲もそんな感じ？と考えていた予想をさらっと裏切ってくれるあたりがLOONAっぽい。軽快なエレクトロポップ風味でコーラスも元気そのもの。ただ、MVなんかを見ると明るい曲なのに微妙に陰影が感じられたりして一筋縄ではいかないのだが…。
C/W曲もそれぞれタイプの異なる曲がそろっていて聴きごたえがある。その中でもとりわけ美しいメロディーが冴えわたるバラード曲「one way」はボーカルメンバー、イブとチュウのショウケース。次作はいよいよ「完全体」でのデビューということになる。 ★★☆（2018/08/26）