評者の好みを「★」の数で表してます。3つが最高。☆は半分。

「LUNARIUM」　春奈るな

2017年6月リリースの3rdフルアルバム。13トラック（実質12曲）収録で、シングルナンバーや既発のミニアルバムに収められていた曲などを除くと、本作での純粋な新曲は6曲となる。まずは、そんな新しい曲の印象から。どの曲も彼女のボーカルの個性を生かした楽曲で、平均点は高いのではないだろうか。お気に入りはM6「NAKED HEART」とM9「Fly Me to the Moon」の2曲。どっちもメロディアスで耳に残るアレンジがいいね。マイナーメロディーなんだけどかわいい感じもあり、ネオ歌謡曲といった風情もある。アニソンでいえば『物語シリーズ』なんかにありそうな雰囲気。M12「REASON」はスケール感のある切ない大バラード曲。これも彼女の得意とするパターンでわかっててもいいなと思わされてしまう。…とまあ新曲に関してはわるくないのだけど、やはりアルバムの約半分がベスト盤的な内容になってしまっているのは、若干気になるところ。むしろ曲数を絞ってオリジナルアルバムらしさを前面に打ち出してくれた方が、作品としての印象度は強まったかもね。 ★★（2017/10/01）

「わたしを旅行につれてって」　寺嶋由芙

2017年7月リリースのシングル（3曲収録）。タイトル曲は、前作に引き続いて80年代風の松田聖子サウンド。元ネタは「風は秋色」あたりだろうか。けっこう初期の初々しいノリ。といってもまるごとパクってるわけではなく、そのへんの雰囲気を感じさせながら、きっちり現代的なアイドルポップスに仕上げている。とてもいいバランスだ。一方、歌詞の内容は、ちょうどリリースのタイミングで26歳を迎えたゆっふぃーらしく、彼氏と一緒に旅行に行くというちょっぴり「オトナ」な内容。ヘタしたら生々しくなってしまう題材だけど、サウンドの爽やかさ、清々しさでうまく中和しているところもウマイ。C/Wは、楽しい盆踊りナンバー「夏'n ON-DO」と早見優のカバー「夏色のナンシー」。どっちもいい出来で、聴き応えのあるシングルになっている。 ★★☆（2017/10/01）

「Hello, future day」　Natsu Summer

8曲収録の1stアルバム（2017年7月リリース）。本作もクニモンド瀧口氏が全曲プロデュースしている。聴いてみてまず驚いたのは、これまでのEPでは「レゲエシンガー」という彼女の肩書どおり全面的にレゲエサウンドが展開されていたのだが、本作ではそこまでレゲエにこだわらず、広い意味での「シティリゾートサウンド」に大きく舵を切っていたことだった。はっきりレゲエっぽいといえる曲はわずか2曲しかない。そして、これまで以上にクニモンド氏のカラーが前面に出ていて、「流線形の新作？」という雰囲気すら感じさせる内容となっている。
これは彼女とクニモンド氏のコラボレーションが好きなファンとしては前向きに評価したい変化だ。爽やかなオープニングの表題曲、ポップなシンセのリフが印象的なM7「風のリビエラ」…など、レゲエしばりにこだわっていたら聴けなかった楽しい曲があふれているからだ。「軽み」が持ち味の彼女の歌声との相性も良いのではないだろうか。聴きようによっては「シティリゾートサウンド＋アイドル」的な感覚も味わえる。もちろんレゲエ曲もわるくない。特に興味深いのがM5「街あかり」。ここでのボーカルはちょっと一十三十一さんを思わせる色気のあるもので、思わずニヤリとさせられる。楽曲も粒ぞろいで充実した作品だ。 ★★☆（2017/10/01）

「I am ONLY」　脇田もなり

Especia脱退後ソロシンガーに転向した脇田もなりさんの1stアルバム（12曲収録）。リリースは2017年7月。レーベルは星野みちるさんと同じVIVID SOUNDである。制作陣もけっこう重複しており、「これだったら間違いないだろう…」とほとんど試聴もしないで注文していた。CDが届いてはじめてちゃんと聴いてぶっ飛んだ！ 「これは傑作といっていいのでは？」。先行シングルの何作か、たしかに耳にしたことはあったはずなのだが、その時はあまりピンときていなかった。まあこういう出会いもタイミングが大事ということだろう。
内容的には「シティファンク歌謡」をベースにした楽しいポップアルバム。くっきりとリズムノリがよい脇田もなりさんの声質、歌唱を生かすにはこれしかない！という感じで、全曲一気に聴き通せる。アルバム全体の統一感も素晴らしいし、一曲一曲の個性も際立っている。バラエティ豊かでカラフルなサウンドは聴き手をまったく飽きさせない。いちばんお気に入りの曲をどれか1曲選ぶだけでも至難の業…という気分になってしまう。「IN THE CITY」「IRONY」「泣き虫レボリューション」「ディッピン」…結局すべてのタイトルを書きだしてしまうことになりそうだ。アイドルポップスというくくりの「名盤ディスクガイド」などに10年後、20年後でも紹介され続けている可能性もあると思う。 ★★★（2017/10/01）

「JinSoul」　LOOΠΔ

LOOΠΔ（イダレソニョ）2017年6月リリースの新メンバーはジンソル。5月のキム・リップから新シリーズに入っており、彼女もまたモデル体型のブロンド美少女である。リード曲「Singing in the Rain」は、クールでダンサブルなデジタルビートが印象に残る。ただ、LOOΠΔというプロジェクトの楽曲におけるクオリティーの高さがこちらに刷り込まれてしまっているので、この曲に関しては「よく出来てるけどLOOΠΔにしては普通かな…」という気もしてしまった。
シンガーとしてのジンソルのポテンシャルをより感じさせるのは、むしろC/W曲「Love Letter」かもしれない。比較的ゆったりとしたR＆B色の濃いナンバー。「Eclipse」に近い路線だろう。さらりと歌っているようだが、歌声の奥からは切ない恋に思いまどう少女の心情が伝わってくるようだ。2曲のうちどちらが好きかと問われれば、文句なしに「Love Letter」なのだが、もしこちらをリード曲にすると2カ月続けて同じような曲になってしまう。さすがにそういうわけにはいかなかったのだろう。 ★★（2017/10/01）