評者の好みを「★」の数で表してます。3つが最高。☆は半分。

「VIOLET BLAZE」　北出菜奈

2017年5月リリースの4thアルバム（11トラック・実質10曲収録）。北出菜奈さんの作品に接したのはなんと11年ぶり！ 聴いてみようと思ったきっかけは、少し前に久しぶりに見たライブがとても良かったからだ。その時の感想はこちらの「ライブレポ（475）」に詳しく書いた。
ステージの印象と本作の雰囲気はやや異なるところもあるのだが、これはこれでとても完成度の高いアルバムだ。サウンドの軸になっているのは（広い意味での）「EDM」。現代的でクールなミドルテンポのデジタルビート、みずみずしいアコースティック楽器の響き、そして時にメランコリーでミステリアス、時にフォーキーでポップな楽曲が、絶妙なバランスで統一感のある美しさを生み出している。冒頭3曲でアルバム全体のムードをきっちり設定し、そこからさまざまなバリエーション、印象的なアクセントとなる楽曲を配置していく構成がとてもよい。北出菜奈さんのボーカルもキャリアを重ねて落ち着きを増し、深みのある表現力を獲得している。彼女の個性がしっかり感じられる内容なのだが、同時にとても聴きやすい。音楽的にもハナエさんの肝っ玉の据わった姉貴分…といった印象。ハナエさんファンなら、かなりの確率で気に入るのではないだろうか。 ★★☆（2017/10/13）

「トーキョー・クロール」　レナ（バニラビーンズ）

バニラビーンズのデビュー10周年の記念に、メンバーそれぞれのソロナンバーが1曲ずつ配信リリースされた（2017年8月）。こちらはレナさんがセルフプロデュースし（作詞にも共作で参加）、歌った楽曲となっている。初披露したライブでは「自分が本当に好きな音楽にこだわってみた」といった意味の話をしていた。ファンとしても、彼女がいちばん好きな音楽はこういう感じだったんだ…という発見のある曲といえるだろう。
そんな本作を一言でいえば、R＆Bテイストの感じられるメロウなシティポップ。方向性としてはSHE IS SUMMERなどが近いかも。タイトルどおり「東京の今」をもっとも感じさせる非常に洗練されたサウンドとなっている。それだけに歌いこなすのがかなり難しそうな曲でもあり、レナさんのボーカルが曲の魅力を十分に引き出せているかというと…正直いって「惜しい」という以上の評価はしにくいかな。ただ、自分の実力をわかった上で、好きな音楽にこだわり果敢にチャレンジした彼女の心意気も十分に買いたいところ。いつかこの曲をしっかり歌いこなせるようになっていってほしいね。 ★☆（2017/10/13）

「ニーハオ! 再見! YODAREDORI!!」　おみそはんとりちゃこはん（バニラビーンズ）

同じく2017年8月にリリースされたリサさんのソロナンバー。プロデュースはもちろんリサさん自身。こちらはプライベートでも親交がある「DJみそしるとMCごはん」（通称おみそはん）との共作＆別ユニット結成というスタイルになっている。
歌唱力に関してはレナさん以上に不安といっていいリサさん。そこで本作はそもそも歌唱力が必要とされない「ほぼ全編ラップ」の楽曲となっている。内容は彼女の大好物だという「よだれ鶏」という中華料理にまつわるあれこれを歌詞にした楽しいもの！ 中華風のアレンジともよくマッチしている。これはアイデア勝ちといっていいだろうね。あくまで正面突破を図ったレナさんに対して、自分の新たな魅力を掘り起こしたリサさん。二人のセルフプロデュースの違いに着目しながら聴いてもおもしろいだろう。※「ニーハオ」の正式表記は漢字。 ★★（2017/10/13）

「セブンティーンパフェ」　＠17

2017年8月リリースのシングル（1曲のみ）。「＠17」（アット・セブンティーン）は、秋葉原の有名メイドカフェ「＠ほぉ〜むカフェ」のメイドさん19名で編成されたユニット。2016年頃から活動してるみたいだけど、知ったのは本作が初めてだった。きっかけは、プロデュース/作曲：カジヒデキ、作詞：かせきさいだぁ…という制作陣になんとなく心惹かれるものがあったため。
仕上がりは、まさにサビの歌詞に出てくる「ストロベリーパフェ」級に甘酸っぱくかわいらしいもの。イマドキ風な電波ソングやボカロ調ではない正統派ポップスで、テーマパークの主題歌のような楽しい響きの中に、どこかメイドらしいクラシカルな佇まいまで感じさせる。歌っているメンバーは決して歌が本職ではないメイドさんたち。でも、メインボーカルとコーラスとの絡みなどもけっこう凝っていて、しっかり聴かせる内容になっている。ボーカルディレクションに技ありという感じかな。おじさん二人が作ったとは思えない夢々しい世界、ぜひご賞味あれ！ ★★（2017/10/13）

「Choerry」　LOOΠΔ

LOOΠΔ（イダレソニョ）2017年7月リリースの新メンバーはチェリ。5月のキムリップ、6月のジンソルに続く新ユニット要員の3人目となる。2001年生まれで16歳の彼女、ルックスは大人っぽいけど、この3人の中では最年少だ。
本作は2曲収録のシングル。リード曲「Love Cherry Motion」はチェリのソロナンバーだ。第一印象は、爽やかで開放的なサマーソング…といった趣だけど、中盤にダークな色合いに変わる大サビがくっついてたりして、プロジェクトの懐の深さと一筋縄ではいかないところをしっかりアピールしてくる。聴き応えあっていいね！ ボーカルは少女らしさの残るかわいい声質。でも、メリハリをつけた思い切りのいい歌唱には確かな存在感がある。C/W曲「Puzzle」はチェリ＆ジンソルのデュエットナンバー。キムリップ「Eclipse」やジンソル「Love Letter」からの流れを意識したようなミディアムテンポのデジタルビートで展開するR＆Bサウンド。楽曲自体のクオリティも高く、もう間違いない仕上がりとなっている。 ★★☆（2017/10/13）