評者の好みを「★」の数で表してます。3つが最高。☆は半分。

「Hey!」　WHY@DOLL

2019年１月リリースのEP（4曲＋アコースティックバージョン2曲：合計6トラック収録）。コンセプトは「ライブ映え」。ステージで盛り上がりそうなアッパーチューンで固めた一作となっている。こういう曲は当然ライブで評価するべきであり、音源での印象はあくまでも「参考程度」ということになるだろう。
その大前提に立った上での本作の感想ではあるのだが、あまりピンとこない…というのが正直なところかな。とりわけ吉田哲人氏による2曲（「ケ・セラ・セラ」と「ふたりで生きてゆければ」）は、「ライブ映え」の解釈にかなり疑問が残る仕上がり。かつての「菫アイオライト」のような曲も十分ライブ映えしていると思うのだが…。その点では、ONIGAWARAが提供した2曲（「It's all right!!」「Mr.boyfriend」）の方が個性的なグルーヴが感じられ印象はわるくない。とはいえ今の彼女たちが歌うべき曲なのだろうかという気もしてしまう。 ★☆（2019/04/02）

「共犯」　KUMONOSU

ハナエ＋八王子Pという組み合わせで結成された"都市型夜光性ユニット"「KUMONOSU（クモノス）」のデビューEP（2019年2月リリース・5曲収録）。ハナエさんの一般流通作品は、2016年の3rdアルバム「SHOW GIRL」以来となる。期待して聴いてみた。
サウンドは八王子Pの得意とするクラブ系ダンスミュージックが基調になっているよう。EDMというかダークで重厚なテクノサウンドだ。普段あまり積極的に聴くジャンルではないが、そこにハナエさんのボーカルが乗ってくると意外なほど聴きやすく、違和感がないどころか、一気にユニットの提示する世界に入っていける。全体にメロディーの展開やリズムはポップスといえるものの範疇におさまっているからかもしれない。M2「秘密裏」などはハナエさんのファンにはおなじみの真部メロディーを思わせる部分もあったりして、新鮮さと連続性のバランスの良さも感じる。ぜひクラブ的な音響環境のスペースで体験してみたい音楽だ。 ★★☆（2019/04/02）

「××」　LOONA

2019年2月リリースのリパッケージ・フルアルバム（12トラック：実質10曲収録）。前年8月リリースの「＋＋」に6トラックを追加、曲順にも変更を加えた作品だが、配信・サブスクなどでは新たな6トラック（実質5曲）のみでのリリースとなっている。ここでは新曲を中心にその印象を書いてみたい。
やはり圧倒的なのはリード曲「Butterfly」だろう。エレクトロニックなゆったりしたビートがうねりを伴ってしだいに熱を帯び、重なる歌声とともにいつしかクールな祝祭の様相を呈する。めちゃくちゃカッコいいのだが、それだけにとどまらず、世界を飲み込みどこまでも広がっていく自由な意思、個人の可能性を肯定するような堂々たる気品と存在感にあふれている。MVの映像も素晴らしく、何度も繰り返し見てしまった。「LOONA（イダレソニョ）」というプロジェクトのひとつの到達点といっていいだろう。
「Butterfly」以外の曲もクオリティーは高い。これだけまとめて聴くと、もはや"天上の音楽"といった趣きでアイドルらしい親近感が薄れてしまうのでは…と心配になるくらいだ。しかし、リパッケージされたCDでは、最後にポップな「Hi High」が配置され、リアルな現実の彼女たちに再会できる構成となっている。どこまでもうまいのである。 ★★★（2019/04/02）

「タイムマジックロンリー」　nuance

2018年12月リリースのシングル（3曲収録）。C/W曲は「セツナシンドローム」の再録バージョンやラップグループとのコラボバージョンで、新曲は実質タイトル曲のみとなっている。その「タイムマジックロンリー」は、時間旅行をテーマにしたアップテンポなナンバー。メロディーやサウンドはレトロっぽさを意識したものだが、よく聴くと「昔の時代にこんな曲は絶対なかった」と言い切れる仕上がり。イマドキっぽくないのにイマドキっぽい。歌詞も含めて不思議な曲としかいえない。しかも、サビだけでなくいたるところのフレーズがあっという間に耳について離れなくなる超キャッチーなナンバーでもある。いろんな意味で「ヌュアンスっぽい」曲なのかもしれない。 ★★（2019/04/02）

「無粋なキス」　ほのかりん

SNSでリリースのニュースが流れてきて、試聴してみたら印象に残った。2019年2月に配信限定で発表されたシングル（1曲のみ）。歌っている「ほのかりん」さんは22歳のシンガーソングライターで、すでに2018年にフルアルバムもリリースしている。
彼女について検索すると音楽のことよりも先にゴシップ的な情報の方が多く出てくるのだが、そんなことが気にならないくらい楽曲が良かった。ものすごく好み。シンガーソングライターなので作詞・作曲も自身でこなしているのだが、言われないとプロの作家が提供しているのでは？…と思ってしまいそうになるくらい完成度が高い。歌謡曲的な哀愁味のあるメロディー。ボーカルの声質、唱法ともぴたっとハマっている。アレンジの古川ヒロシ氏の仕事もとてもよい。アルバムもチェックしたので近いうちにその感想も書いてみたいと思っている。 ★★☆（2019/04/02）