評者の好みを「★」の数で表してます。3つが最高。☆は半分。

「いい女をよろしく」　寺嶋由芙

2019年4月リリースのシングル（2曲収録）。タイトル曲は、ゆっふぃーのアイドル体験の原点だというハロプロ・サウンド（ダンス☆マンがモーニング娘。などのアレンジを手がけて大ヒットを連発していた頃だろう）を再現したディスコ/ファンクナンバー。その狙いはよくわかるのだが、本家と同じレベルでノリノリになれるグルーヴがあるかと言われるとそこまででもないかな…。言い方はキツイかもしれないが、やはり「似て非なるもの」にしかなってない印象。ダンスナンバーとしてのクオリティーで比較するなら、前作「君にトロピタイナ」の方に軍配があがる。
一方、C/W曲「Last Cinderella」は、これまでの彼女のレパートリーにはなかった大人っぽいシティ・ボッサ・ファンク…といった趣きの曲で新鮮に聴ける。むしろこちらが表題曲で、「いい女〜」はC/Wの"お遊び曲"という位置づけの方が座りがよかったかもしれない。 ★★（2019/07/14）

「センシティブサイン」　RYUTist

2019年4月リリースのシングル（3曲収録）。いずれ劣らぬ爽やかで楽しいポップスが並んでいる。メロディーのおいしさとボーカルワークの秀逸さ。その安定のクオリティーというか、平均点の高さにうならされるばかりだ。それでいて、サウンド優先主義に陥ってしまうことなく、アイドルらしさの極みでうまく「寸止め」されている。そのバランス感覚も絶妙。このレベルの楽曲が10曲そろったら、またしても傑作アルバム誕生まちがいなしだろう。
個別の曲では、まずタイトル曲のすっきりと背筋の伸びた清楚なたたずまいが素晴らしく、まさに王道といっていい仕上がり。リリカルな大サビもよく効いている。「素敵にあこがれて」は歌詞の楽しさとコーラスの見事さに惹きつけられる。「バ・バ・バカンス！」ではラテンリズムでスウィング。最後の「ありがとうございました」と言っている時のメンバーの表情が目に浮かぶよう！ ★★★（2019/07/14）

「town」　nuance

2019年4月リリースのミニアルバム（7トラック・実質6曲収録）。冒頭に短いポエトリーリーディングのトラックが入っている（タイトルトラックである）。屋外、すなわち「街」の中で録音したような自然な音場の中で語られる言葉…。そこからもうこの作品の世界に引き込まれてしまう。全体的には同じ4月に渋谷O-EASTで行われたワンマンライブのテーマを凝縮したような盤といっていいだろう。深読みできそうな歌詞の世界とスタイリッシュなサウンドで構成されたナンバーの数々。
その中でもとりわけ印象的な曲が2トラック目（実質1曲目）に収録されている「tomodachi」だ。もともとはサウンドプロデューサー・佐藤嘉風氏がやっていたバンドの曲でカバーだという。しかし、最初から彼女たちのために書かれた曲であるかのようにぴったりハマっている。「友達」ではなく「tomodachi」としか表現できないか細く不確かな関係性。でも、今はそれだけが頼りなのだと訴えかけるような歌からは孤独と隣りあわせの愛おしさが伝わってくる。非常に作家性を感じさせる、ある意味で文芸作品のようなミニアルバムではないだろうか。 ★★☆（2019/07/14）

「Kissing Game / MELODY」　CHEAP CREAM

エレクトリックリボンを卒業したericaさんがボーカルをつとめる男女2人組ユニット「チープ・クリーム」の1stシングル（2曲収録）。リリースは2019年2月。第一印象は、まず「ericaさんってこんな歌声だったんだ！」という新鮮さ。エリボンでももちろん歌っていたわけだが、ソロでメインボーカルというのはおそらく初めて聴いたからだ。高音を生かしてメロディアスなナンバーをのびのびと歌っている。意外にも…というと失礼かもしれないが女性らしい歌声だ。サウンドはニュージャックスウィングなど90年代的なR＆Bを下敷きにしたものだが、もちろん現代的な感覚で再構築されている。クラブミュージック的な要素もあり、華やかでステージ映えしそう。ライブで聴いてみたいね。 ★★（2019/07/14）

「AFTER 6 SESSIONS」　星野みちる

2018年9月にTBSラジオ「アフター6ジャンクション」に出演し、生放送されたスタジオライブをそのまま配信音源化したEP（4曲収録）。リリースは2018年10月。ボーカル＋サポートでギター、キーボード。3人での演奏。4曲目「大好きだよ、パパ」のみ本人によるキーボード弾き語り。
時期的には、ちょうどVIVIDサウンドを離れ、独立して活動していくことを模索していた頃だろう。弾き語り＋最小限の楽器によってポップなサウンドを再現する…という現在のスタイルの原型を聴くことができる。ファンにとっては非常に興味深い「記録」である。同時に、生放送の一発本番で歌っているにもかかわらず、素晴らしく安定し、多彩な表現を聴かせる歌声の魅力にもあらためて惹きつけられる。セットリストには、小編成で再現するのはなかなか難しそうな「夏なんだし」も組み込まれている。2019年夏のライブでも歌ってくれるだろうか。 ★★☆（2019/07/14）