評者の好みを「★」の数で表してます。3つが最高。☆は半分。

「月がきれいですね」　星野みちる

2019年10月リリースのフルアルバム（10曲収録）。現在の星野みちるさんの音楽性を集約した一作だろう。「アコースティックサウンドでポップナンバーを歌う」というコンセプト。しかし、いわゆる弾き語りスタイルではなく、非常に緻密にアレンジされたアコースティックバンドサウンドがそのベースとなっている。また、収録曲の多くは自作であり、長く活動できるアーチストとしての土台をつくるというプロデューサー、サリー久保田氏の描いた方向性に沿って、彼女自身が確かな一歩を刻んだアルバムでもある。とても充実した内容だ。
アコースティックサウンドなので、ボーカルの存在感もより重要になってくる。もともと泣きの入ったきれいな声質なのだが、本作では曲との距離感をしっかり意識して、さっぱりとした歌い方をしているように感じられる。結果的にそれが楽曲本来の良さを引き出すことにつながっている。表題曲をはじめとするオリジナルを中心に、センスを感じさせるカバー2曲（「皆笑った」「話しかけたかった」）とバランスの良い仕上がり。ボーカリスト星野みちるの魅力も十分に味わうことができる。 ★★☆（2020/03/25）

「追憶のネビュラ」　ハレトキドキ

2019年11月リリースの1stフルアルバム（15トラック・実質10曲＋リミックス1曲収録）。持ち味は、やはり歌謡曲テイストのマイナーメロディーとダンサブルなクラブサウンドを融合させた楽曲。冒頭の「キスミー」「タッチミー」の両曲がまず際立っている。終盤、4つ打ちのカッコいいインストナンバーに導かれて畳みかける「Nebula」「GET MY LOVE」「Mermaid」…の流れもいい感じ。一方、中盤でややシフトダウンするアイドルポップスっぽい曲などは若干の食い足りなさもあったかな…。ただ、こういうサウンドの本領は、クラブとかライブハウスのような空間の大音量で体感しないとなかなか伝わらないもの。そういう環境で聴くとまたがらっと印象が変わる可能性もあるだろう。ライブはまだ一度見ただけ。機会があればまた行ってみたいね。 ★★（2020/03/25）

「GREENPOP」　加納エミリ

2019年11月リリースの1stアルバム（10曲収録）。まず感じるのは楽曲の平均点がきわめて高いこと。ほぼ全曲がシングルに切れるといっても過言ではないだろう。くっきりしていて覚えやすいメロディーとシンプルな言葉づかいながらパンチのきいた歌詞。作詞・作曲はすべて加納エミリさん自身だ。ユーロビートやディスコ、さらにはもうちょいレトロ味の強いユーロポップ…など、懐かしめの音楽をしっかり消化吸収して現代風の味つけでよみがえらせた手さばきの見事さにうならされる。
そして、そんな作品の個性をいっそう際立たせているのが彼女のボーカル。ヘタウマというと失礼かもしれないが、決して歌唱力で圧倒するタイプではない。でも、なんともいえない味がある。特にフレーズの最後でふわっと脱力する感じの歌いまわし。たまらない。ある意味でアイドル的。キャッチーな楽曲との相性抜群なのだ。全10曲で40分弱。1曲平均3分台。おいしいところを凝縮するというポップスの基本だろう。一気に聴ける。いきなりの「名盤」誕生だ。 ★★★（2020/03/25）

「ニコニコ♡STREET」　ニコニコ♡STREET

2019年12月リリースの1stアルバム（18曲収録）。2019年いっぱいで2年弱の活動を終了した「ニコスト」の全曲集。オリジナル全13曲とメンバーのソロ5曲を網羅。ニコストは、ニコラバとともに2019年にもっともよく見たアイドルだっただけに、改めて聴きなおすととても懐かしい気持ちになった。
ニコスト楽曲の特徴を要約すると、かわいくて元気なシンセサウンドと、ネコ目線の独特な歌詞の世界…ということになる。高級感や重量感はまるでないのだが、耳になじむと妙な中毒性があり、ステージによく映えた。「ニャンダフルドリーマー」「ときめきキャッチャー」「ハッピーニューイヤーおもち」…などは名曲だと思っている。同時に、ネコモチーフにこだわったことで曲が個性的になりすぎ、グループがその枠からなかなか抜けられない状況をつくってしまった気も。ひょとしたら、ニコストというユニットが解体したのは、その枠を打ち破るための必然のプロセスだったのかもしれない。 ★★☆（2020/03/25）

「ニコニコ♡SWEET」　ニコニコ♡SWEET

ニコスト解散のきっちり1カ月後にお披露目された新グループ「ニコスイ」。メンバー6人のうち3人が元ニコストだし、グループ名も1文字違い。実質ニコストの後継ユニットといっていいだろう。本作は2020年2月に配信リリースされた1stミニアルバム（6曲収録）。
コンセプトは「甘くてかわいいアイドル」。楽曲はいずれもスイーツ（お菓子）をモチーフにしたものとなっている。"しばり"があるのは同じだが、ネコよりお菓子の方が歌詞を書く上での自由度は高いようで、グループの個性とポップスとしての普遍性のバランスは一気によくなった。「ポップンキャンディ」「SWEETS PARADISE」「プリン・ア・ラ・モード」…どれも甘くてかわいい楽曲で楽しく聴ける。「ハッピーニューイヤーおもち」でおなじみのRenn Saitoさんによる「異世界ケーキ大戦」もとてもいいアクセント。ストレートでかわいいポップナンバーを歌うユニットとして、ニコラバとの「二枚看板」になっていくんだろうなという可能性を感じさせてくれる作品だ。 ★★☆（2020/03/25）