評者の好みを「★」の数で表してます。3つが最高。☆は半分。

「Ange☆Reve」　Ange☆Reve

2020年2月リリースの1stフルアルバム（12トラック・実質11曲収録）。2014年の活動開始から6年目で初のフルアルバム、しかもセルフタイトル作品…ということで、収録曲の約半分（6曲）がこれまでの代表曲を現在のメンバーで新たにレコーディングしなおしたものとなっている。成り立ちとしては、「ベストミニアルバム＋新作ミニアルバムを一枚にカップリングしたもの」と考えて大きくは間違っていないだろう。
結果的にこの構成が、これまで何度もメンバーチェンジを重ねてきた「あんじゅれ」というグループの現在形を捉えるためにとても効果的なものとなっている。現在の彼女たちはメンバー5人全員が20代。少女でもなく、かといって大人の女性とも言い切れないその年代らしい二面性を「天使と堕天使」というコンセプトで表現している。明るく弾ける曲にも10代とはまた違う華やかさがあり、切なさに振り切った曲からはリアルで人間的な感情が伝わってくる。変化球ではないストレートなアイドルポップとして聴き応え十分だ。直近ではメンバーも固定でき、活動も充実していた時期だっただけに、早くまた彼女たちのステージを見てみたいという気持ちが強くなっている。 ★★☆（2020/05/05）

「16歳のアリス」　川上きらら

アイドルグループ「うさぎのみみっく!!」のオリジナルメンバー、川上きららさんの1stソロアルバム（10曲収録）。2020年3月リリース。出会ったきっかけは、TBSラジオ「アフター6ジャンクション」での吉田豪氏がアイドル楽曲を紹介するコーナー。流れた表題曲の80年代っぽさが印象に残った。
改めてアルバム全体を通して聴くと、いろいろな意味でさらにうならされた。まずイマドキのアイドルのアルバムなのに「わかりやすいアッパー曲」がひとつも入ってない。全曲、美しいメロディーのミディアム〜スローナンバー。初期の松田聖子、あるいは初期の今井美樹などを思わせるようなさわやかで洗練された80年代サウンドにのせて、これまた清涼感あふれる16歳の歌声のきらめきがたっぷりフィーチュアされている。現代アイドルの刺激的なサウンドに慣らされた耳で聴くと、最初はやや地味に感じるかもしれない。しかし、聴き進むうちに、そのずば抜けた歌唱力とフレッシュな声質、ナチュラルでみずみずしい佇まいの魅力から離れられなくなる。そんな彼女のボーカルを生かすには、このコンセプトしかなかったのではないか…といつの間にか納得させられてしまうのだ。楽曲にはすべて元チカブーンの吉田由香里さんが関わっている。全体的なサウンドの統一感もすばらしい。 ★★★（2020/05/05）

「みんなが変化球に走るので、私、アイドルを独占させてもらいます。」　新山ひな

同じラジオ番組で吉田豪氏が紹介していたのを聴いて知った、やはり「うさぎのみみっく!!」のメンバー、新山ひなさんの1stソロアルバム（7曲収録）。リリースは2020年4月。
同じグループのメンバーだがソロシンガーとしての二人の個性はまったく異なる。川上きららさんが王道アイドルらしい清涼感たっぷりの歌声なのに対して、新山ひなさんは躍動的で生命力を感じさせる、のびのびとしたボーカルスタイル。アルバムもそんな彼女の個性を生かした、いい意味でバラエティー感のある楽しい作品になっている。印象的なナンバーをあげるならM3「美・粒・子・ジェニック」かな。タイトルや歌詞からもわかるように（おそらく1980年代の）化粧品プロモーションソングへのオマージュ。長谷泰宏氏らしいリッチなストリングスが効いている。元気で茶目っ気のあるボーカルとの相性もばっちりだ。加納エミリさんのM6「ダーリン」も好き。若い女性ならではの色気を感じさせるナンバーで、アルバムの中でも大きなアクセントになっている。新山さんの歌声もここでは「アイドル」から少しだけ距離を置いているように聞こえる。このあたりの匙加減もとてもよい。 ★★☆（2020/05/05）

「うさぎのみみっく!!ソロ曲集」　うさぎのみみっく!!

2018年7月リリースの「うさぎのみみっく!!」メンバーのソロ楽曲を集めたミニアルバム。新山ひなさん2曲、川上きららさん3曲、清水かれんさん1曲…の全6曲収録。最新のソロアルバム2作を聴いた勢いで旧譜のこちらもチェックしてみた。第一印象は「2年前の作品ながら持ち味はすでに確立されている」…という感じかな。新山さん、川上さんともに当時はまだ15歳、14歳のはずだが、声に若干の幼さは感じられるものの、どの曲もしっかりと歌っており、それぞれの個性もすでに感じられる。川上きららさんがギターロック的なサウンドをバックに歌っているM4「ライトミライト」が新鮮。それ以外ではやはり吉田由香里さんが大半の楽曲を提供していて、彼女が「うさぎのみみっく!!ソロプロジェクト」における音楽面での最重要人物であることがよくわかる。たしかにイマドキのアイドルらしくない作風ではあるが、クオリティー的にはもっと広く聴かれてしかるべき作品だ。 ★★（2020/05/05）

「PopSlip」　伊藤美来

声優・歌手「伊藤美来（いとう・みく）」さんの2ndフルアルバム（11曲収録）。2019年7月リリースだが、半年以上たってからSNSで紹介されていたのをきっかけに聴いてみた。
なんといってもオープニングの「PEARL」がすばらしい。温かみのあるシティポップ風サウンドと耳に残るメロディー。ボーカルもすごくナチュラルに楽曲に溶け込んでいる。繰り返して何度でも聴いていたくなる曲だ。作詞・作曲は高田みち子さん。なるほど〜という感じ。彼女自身のソロアーチストとしての活動はこのところ追えてなかったけど、楽曲提供という形でもこうして良い曲を書き続けていることがわかってなんだかすごくうれしくなった。ただ、本作にはこの1曲のみの参加だったよう。もっとたくさん聴きたかったのだが…。ちなみに2曲目以降は、人気声優の作品らしくどの曲もとてもリッチな仕上がりなのだが、いまひとつ刺さらず。全体的には「1曲だけ」ということで星2つで。 ★★（2020/05/05）