評者の好みを「★」の数で表してます。3つが最高。☆は半分。

「ファルセット」　RYUTist

2020年7月リリースの4thアルバム（12曲収録）。当初5月の発表を予定していたがコロナ禍で延期になったという。たしかに聴いてみると「春」をイメージした曲が印象に残る。その清新な空気が最初に感じられるのが、冒頭のプロローグ的なトラック「GIRL」と続くM2「ALIVE」。奥行きのあるアコースティックな音場で統一されたこの2曲は、あわせて8分以上もあり、一種の組曲といっていいだろう。「ALIVE」ではポエトリーリーディング的なパートもあり、演劇の舞台を見ているような感覚になる。この流れは、サイケなコード感とみずみずしい躍動感が共存するM4「ナイスポーズ」を経て、ポップなメロディーにのせて切ない感情をエモーショナルに歌うM5「好きだよ…」でクライマックスを迎える。ここまではすべて新曲で構成され、彼女たちの新しいスタイルを提示する、ひとつの完結したパートといってもいい気がした。
一方、M6「センシティブサイン」からはじまる後半は、いわばバラエティーショー。シングルなどですでに発表されている既発ナンバー4曲が含まれ、楽しくライブ映えしそうな曲が並んでいる。全体を通して、楽曲の良さに加え、RYUTistのお家芸ともいえるフレッシュなボーカルと的確なコーラスワークの冴えにうならされる。音楽的洗練とアイドル的な可憐さが混然一体となった53分。 ★★☆（2020/08/14）

「Soul Lady」　YUKIKA

韓国を拠点に活動している日本人ソロシンガーの1stアルバム（12トラック：実質8曲＋シングル曲のアコースティックバージョンなどを収録）。リリースは2020年7月。先行シングル2作でも印象的だった「日本風シティポップにインスパイアされたK-POP」。歌詞はすべて韓国語。楽曲を提供しているのも韓国のスタッフで、MonoTreeなどよく知られたクリエイティブチームも含まれている。どこか懐かしさも感じさせるサウンドなのだが、日本だと5分前後になりそうな雰囲気の曲でも、アウトロを思い切りよくカットして3分台にしてしまうあたりなど、やはりK-POPっぽい。キャッチーでありながらベタつかないメロディーと洗練されたアレンジ。ボーカルの清楚な声質としなやかな歌唱も魅力的でとても心地よく聴けた。
聴きながらふと思ったのは、歌い手が日本人だから日本風シティポップを題材にしてみた…だけなのかどうなのかといったあたり。日本のシティポップが海外でも人気だという話はたまに目にするが、その広がりの実態をもっと知りたい気にさせられる。 ★★☆（2020/08/14）

「ニューストーリー」　CuBerry

京都をベースに活動している女性4人組アートユニットの1stアルバム（9曲収録）。2020年7月リリース。メンバー4人のうち1人は映像/アートワーク担当なので、実質的には3ピースバンドのようだ。SNSでふと目にとまったMVが印象に残ったのでアルバムも聴いてみた。
そのサウンドを大まかにまとめるとガレージっぽさのあるインディーポップ。透明感のあるボーカル、コーラスを生かしたガールズバンドらしい爽やかな曲もあれば、60年代風のサイケデリック、あるいはドリーミーなメロディーやアレンジに惹きつけられるナンバーも。ベースとドラムスの存在感がくっきり浮かび上がるシンプルな音づくりは、冒頭の何曲かを聴いただけで「お、いいね！」と思わせられた。当然、これまでなら「ステージもチェックしてみたい。次のライブの予定はいつだろう？」という感じでさっそく現場に向かっていたと思うのだが、現時点ではコロナの影響で見通せない部分が多い。しばらくはこの音源を聴き込むことになりそうだ。 ★★（2020/08/14）

「スターマイン」　Jewel☆Rouge

2019年9月リリースの1stシングル（全3タイプで4曲収録）。2017年末に結成されたグループなので、活動開始から1年半以上たっての初音源。満を持してのデビューシングルでもあり、ここで聴くことができる4曲はいずれも彼女たちの代表曲といえるナンバーとなっている。
サビのフレーズが印象的な表題曲もいいのだが、実はC/W曲にも良曲がそろっていてあなどれない。いちばん好みなのは「嘘つきアンスリウム」。イントロのシンセの音色がめっちゃ80年代なデジタル歌謡。歌詞の切ない感じもたまらない。何度もリピートしたくなる。「Shooting Star」もいいね。シャープなギターロックでリズムは4つ打ち。カッコよさ、ステージ映えはいちばんかもね。そして、赤がテーマカラーの彼女たちを象徴するような「Ruby」は、マイナー調のロック歌謡。他にかわいい系の持ち歌もあるのだが、本作はエモーショナルかつダンサブルなナンバーで固めている。各曲の平均点がかなり高いデビュー作だ。 ★★☆（2020/08/14）

「黎明solidarity」　Jewel☆Rouge

2020年5月リリースの2ndシングル（全3タイプで4曲収録）。前作リリース時は7人編成のグループだったが、2020年からは5人で活動している。表題曲の「solidarity」は、普段あまり目にしない単語だが、「連帯、結束、団結」といった意味のようだ。
全体的には、よりエモーショナルで重量感のあるサウンドへと方向性が絞り込まれた印象。前作ではポップな「歌謡」的要素もけっこうあったのだが、本作は完全に「ロックバンドのバンドサウンド」になっている。また、曲調にあうせいか、月美たまごさんのパワフルなボーカルが大きくフィーチュアされているのもポイントだろう。カッコよさに振っているので、どの曲もステージ映えはそしうだが、もうちょいアイドルらしいかわいい曲が聴きたい…という気もしたかな。その意味ではC/W曲「君と僕のJEWEL」が、比較的ライトなナンバーで、作品の中で大きなアクセントになっている。 ★★（2020/08/14）