評者の好みを「★」の数で表してます。3つが最高。☆は半分。

「FEVER」　寿々木ここね

アイドルグループ「SAKA-SAMA」のリーダー、寿々木ここねさんの1stソロミニアルバム（6曲収録）。リリースは2020年8月。SAKA-SAMAは、以前ライブで見たことがあったが、その時はあまりピンときていなかった。本作を知った直接のきっかけはTBSラジオ「アフター6ジャンクション」で紹介された回。ボ・ガンボスの「魚ごっこ」をカバーしていて、それがけっこういい雰囲気だった。
あらためて全曲を聴いてみてぶっ飛んだ。冒頭のタイトル曲からして一筋縄ではいかない。ゆったりしたレゲエ調。深みのある歌詞と穏やかなのにその底にきりっとした意思を感じさせるボーカルのカップリングが印象に残る。直後のロックナンバー「彗星まち」の爽快な疾走感でテンションはさらにアップ！ ラストのキラキラポップチューン「スイート・セレブレーション!」まで一気に聴いてしまった。
タイプのまったく異なる楽曲を集めた感じの作品なのだが、それを寿々木ここねさんの歌声と存在感が強力に束ねている。ソロアーチストとしての個性とポテンシャルにあふれた作品だ。 ★★★（2021/04/09）

「君が一番かっこいいじゃん」　SAKA-SAMA

寿々木ここねさんのソロがすばらしかったので、彼女がリーダーを務めるSAKA-SAMAの楽曲も聴いてみたいな…とチェックしたのがこちら。2020年12月リリースの2枚組アルバム（28曲収録）。ライブ会場のみで販売していたアルバムに既発シングルや新録などを組み合わせたなかなかの大作。以前ライブで見た時には7人編成だったが、現在は2人組になっており、本作も2人のボーカルによるバージョンを収録しているようだ。
「ディスク1」はガレージっぽいロックサウンドを軸に。エッジがきいていながらメロディアス、そしてボーカルとの相性の良さ。これぞSAKA-SAMA！という感じかな。もっと早くから聴いておけばと思ってしまうような好きなタイプの曲ばかり。その合間に浮かび上がる、コロニアルな長閑さを漂わせた「パルピテーション・パルプフィクション」、甘酸っぱい青さがほとばしる「空耳かもしれない」…といったナンバーも良いアクセントになっている。
「ディスク2」では、やや変化球っぽい曲が増える。90年代ディスコ調の「Ex/cla/ma/tion!!」、フォーキーな味わいのレゲエ「うぃんたー・まりん・すのー」などが印象に残る。全体としてやや「ごった煮」感はあるけど、SAKA-SAMAというグループを一気に知るにはベストなアルバムかも。 ★★☆（2021/04/09）

「Step by Step」　サンダルテレフォン

4人組アイドルグループの1stアルバム（8曲収録）。2020年8月リリース。名前をちょっと目にしたことがあるくらいの認知度だったのだが、Spotifyのオススメに出てきたので何気なく聴いてみた。
結論からいえば「かなり好み」。オープニングはロックで、これもなかなか良いのだが、核となる音楽性は2曲目以降のアイドルファンク、シティポップ路線だろう。イメージとしたら、GALETTeとNegiccoがひとつの作品に同居している…といった趣き。もちろん全体的な統一感も保たれていて、すっきりしたサウンドとアイドルらしく弾ける要素のバランスがとても良い。フレッシュな感覚もあり、楽しく聴くことができた。近年、ライブアイドルも「沸き」だけでなく、もっとじっくり楽しませるサウンドを指向するグループが増えてきているようだ。本作もそんな流れを捉えた一枚といえるのではないだろうか。 ★★☆（2021/04/09）

「SERVICE ACE」　彼女のサーブ＆レシーブ

2人組アイドルグループの1stアルバム（10トラック：8曲＋リミックス2曲収録）。もともと2017年にリリースされていた作品にリミックスを追加して2019年2月に再発した改訂盤。ライブで2回ほど見たことがあったので音源も…と思ってチェックしてみた。
80年代シティポップ、90年代渋谷系〜インディーポップ…などに通じる爽やかなポップサウンド。ライブでは脱力系のボーカルもけっこう印象に残ったのだけど、本作ではしっかりディレクションされて、洗練されたサウンドにふさわしいものに仕上がっている。とはいえ、ちゃんとしすぎて無個性になるわけではなく、どこか往年の女子大生ブームの頃の楽曲を思い出させるような効果も…。これはこれで全然ありだろう。とにかく楽曲自体の平均点がかなり高い盤。名盤といってもいいレベルだろう。ちなみに2021年4月からグループ名を「カノサレ」へと改名している。 ★★☆（2021/04/09）

「Cosrobest」　コスメティックロボット

コスロボは、2008年から何度かの中断をはさみながら、メンバーを変えて活動しているアイドルグループ。2020年から現在活動中の「三代目」を見る機会が何度かあり、その楽曲がけっこう良くて気になっていた。しかし、現役メンバーによる音源はおろか、旧譜も含めてサブスクにもダウンロード販売にも対応していない。しかたなく「二代目」時代のCDを購入してチェックしてみた。
リリースは2018年8月。8トラック（実質7曲）収録。タイトルからもベストアルバム的な内容のようだ。実際、三代目のライブのセットリストがかなりの割合で網羅されており、コスロボの音楽性をざっくり知りたいという目的にはぴったりだろう。基本はエレクトロビート＋哀愁味のあるメロディーライン＋軽くエフェクトのかかったボーカル。Perfumeのブレイク以降ちょっとした流行となったエレポップアイドル、フューチャーポップアイドルの初期テイストを現在に伝えるサウンドといえる。ざっと10年くらい前のシーンへの懐かしさもあるし、現在このジャンルを主戦場とするアイドルが減っているのでかえって新鮮味も感じられる。全体的な楽曲のクオリティも高く、単体の作品としても楽しめる仕上がりだ。 ★★☆（2021/04/09）