CD Review 288

評者の好みを「★」の数で表してます。3つが最高。☆は半分。

「Candy Sweetie Coat」 川上きらら

2021年7月リリースのミニアルバム(5曲収録)。すばらしかった前作のフルアルバム(「16歳のアリス」)から約1年4カ月のインターバルをへて発表された「続編」といった趣きの新作。やはり全曲に吉田由香里さんがかかわっている。川上きららさんのキャンディーボイスを生かした、甘くてかわいく、そして時に切ないポップナンバーがコンパクトな小箱にぎっしり詰められている、そんな印象。最初から最後までまったく隙がない。全曲良いのだが、あえてベストを選ぶとしたらラストに収録されているM5「響けカンパーナ」だろうか。カンパーナとはイタリア語で「鐘」の意味。(おそらく二人だけで)結婚式をあげた若いカップルがその高揚感のままに車を走らせていく…という映画のワンシーンみたいなストーリーを軽快なロックサウンドにのせて歌う。ギターソロを効果的に使ったアレンジがじつにゴキゲンで、この曲を聴き終わるとまた最初からもう一度…みたいな気分になってしまう。いまソロアイドルを聴こうと思った時に絶対に欠かせないシンガーのひとりであることは間違いない。 ★★★(2021/09/10)

「ニコニコ♡STAGE」 ニコニコ♡STAGE

2021年7月25日の「ニコステ1stワンマン」で来場者全員にプレゼントされた1stフルアルバム。ニコステのオリジナル曲に加えて、前身グループのニコスト、ニコスイから引き継いだカバー曲、さらにはメンバー5人のソロナンバーまで、たっぷり20曲を収録。この時点での彼女たちのすべてを一気に聴ける作品となっている。ちなみにワンマンではさらなる新曲のお披露目もあり(当然本作には未収録)、ニコステがリアルタイムでバージョンアップを続けていることを示した。
本作でとりわけレアというか貴重なのはやはりソロだろう。メンバーの個性を生かした、それぞれまったく異なる曲調に仕上がっていて、生誕ライブのような特別な機会にしか聴けないのが本当にもったいないくらい楽しい。宇津木りおさんの「片想いペトル」、雷神サンダーレイガーさんの「SKY HERO」…このへんはニコステ本体でやっているどの曲ともまったく違うカラーで、グループ全体の音楽性にも豊かな奥行きを与えるものではないだろうか。一般流通盤ではないが、そのうちサブスク等でも配信してほしいね。 ★★☆(2021/09/10)

「シャドウ・ヴィーナス/輪郭」 DISCOMPO with 泉茉里

2020年に活動を開始した4人組バンドの1stシングル(2曲収録)。前身グループである(M)otocompoから参加しているDr.Usuiと絢屋順矢氏に加えて、元いずこねこ、夏の魔物などの泉茉里さん、エイプリルズの名嘉真法久氏(映像担当)がメンバーだ。本作は2021年1月に通販のみでのリリースとなった(その後、サブスクなどでも配信開始)。
楽曲は先行で1曲ずつ公開されたので、最初に聴いたのは「輪郭」だった。スパニッシュテイストのアコースティックギターに導かれて始まるウェットな情感を秘めたメロディー、それを支えるデジタルなビート感。わずか3分10秒の比較的短いナンバーの中にひとつの物語が凝縮されていて、何度でも繰り返して聴きたくなる。泉茉里さんの魅力的な歌唱とともに一発で気に入ってしまった。「シャドウ・ヴィーナス」もマイナーな曲調で、泉茉里さんのボーカルを前面に押し出しているという点では共通点はあるが、比較するとどうしても「輪郭」の印象の方が強い。ぜひライブでも体感してみたいグループだ。現在、コロナ禍の影響もあって活動が限定的になっているのが惜しい。 ★★☆(2021/10/19)

「I'mpossible?」 Luce Twinkle Wink☆

2021年3月リリースのメジャー6thシングル(2形態で全3曲)。ルーチェは現在のアークジュエルを代表する5人組アイドルグループ。2014年から活動しているのでもう7年目。AJ主催イベントでは20年初頭から見ているが、単独でも見に行くようになったのは21年から。コンセプトが「アニソン」なので、あまりアニメを見る習慣のない者としては、最初ややハードルの高さも感じていた。でも、実際のステージを見ると問答無用の楽しさに惹きつけられたね! まあ、そのへんはライブの感想を読んでいただくとして…。
本作も表題曲はアニメ主題歌。ほのぼの楽しい雰囲気のリズムと歌詞の言葉遊び的なところが愉快なナンバー。ステージでは間奏のふわふわ漂うようなダンスも印象に残る。C/W曲「スーパマジカルーチェミラクル☆トゥルーパーマジカルーチェミラージュ」は魔法の呪文がタイトルになった曲。スピード感がとてもいいね。もう1曲の「Graduation」は、(公式にではないが)本作が最後となった桧垣果穂さんの卒業ソング…といったイメージ。 ★★☆(2021/10/19)

「LLTW☆」 Luce Twinkle Wink☆

2018年1月リリースの1stフルアルバム(14曲収録)。活動7年目だがアルバムはこの1作のみ…というのは昨今のアイドルにはありがちなパターンではある。いわゆるベストアルバム的な構成の作品。
ステージでよく歌われる代表曲がずらっと並んでいるので、とりあえずルーチェのライブの雰囲気を知りたいという場合には、これを聴いておけば大丈夫という感じかな(直近の曲はシングル等で補う必要はあるが)。逆にステージでやる頻度はそう高くないけど印象に残るのは、中盤の「Password」「Let me cry」あたり。一言でいえばエモーショナルなマイナーチューン。でもどこかからっとしていてベタつかないのがこのグループの持ち味だろう。この路線の曲、今後も時々やってほしい。 ★★☆(2021/10/19)