2012/04/27　平賀さち枝　新宿 タワーレコード（インストア）

タワーレコード新宿店の全面リニューアルオープン記念インストアイベント。第一弾が平賀さち枝さん…ということで2日連続で聴きに行きました。7階イベントスペースの場所は以前と同じだけど、パブリシティによるとお客さんの収容人数は1.5倍とのこと。ステージも以前より高めになっているのかな。

さて、この日は普通のインストアライブではなく、「公開レコーディング」とのこと。平賀さんが新宿タワーレコードを初めて訪れた時の感動を歌った「No Music, No Life」をステージで公開レコーディングし、6月のインストアライブの日から実際にタワレコ限定シングルとして発売してしまう…という企画だ。
この話を聞いた時は、いわゆる「ライブレコーディング」なんだろうな…と思っていた。普通にインストアライブを行い、一発録りしてしまうやつ。多少のミスや店内のノイズが入ったりしても、それもまた臨場感だし…。ところが、ステージに現れた平賀さんの説明によると、スタジオ録音同様にOKが出るまで何回も録り直します、ひょっとしたら夜中にまでかかるかもしれないけどよろしければ見て行ってくださいね…という感じ。なるほど…。演奏はアコースティックギターの弾き語り。1人だけでのレコーディング。
ちなみに録音中はPAからは音が出ない。つまり彼女の「生声」を聴ける貴重な機会でもある。告知が直前だったこともあって、集まったお客さんは40〜50人だろうか。みんな録音の邪魔にならないように、静かに熱心に聴いていた（いちいち拍手もしない）。以下、この日の全テイクを軽くメモ。

【Take1】1コーラス目で中断。【Take2】2コーラス目で中断。【Take3】完奏。プレイバックして確認するもOKにはならず。【Take4】1コーラス目で中断。【Take5】完奏。プレイバックするも「まだちょっと固いですね…」。ここで「気分転換に…」と「パレード」を弾き語りで軽く歌う。ちょっとスローなバージョン。そうこうするうちに自分を追い込みすぎたのか、声が出なくなってしまう。スタッフがティッシュを差し入れ。大勢の人が見守る中では落ち着かないだろうな…と思ってたら、やはり「ちょっと休憩させてください…」といったん控室に。しばらくしてステージに復帰。今度は「江の島」をワンフレーズ歌って調子を確認。【Take6】1コーラス目で中断。【Take7】完奏。この時点で始めてからすでに1時間経過。まだ気持ちが高ぶってるみたいで、もう一度控室で休憩。スタッフが「再開する時はアナウンスしますので店内をご覧になってて下さい…」。私も書籍コーナーで立ち読みなど。15分後再開。【Take8】2コーラス目で中断。【Take9】完奏。【Take10】完奏。【Take11】完奏。このへんになるとお客さんがいるのがあまり気にならなくなったのかどんどん歌っていく。プレイバックもしない。【Take12】完奏。【Take13】完奏。スタッフと相談。「次を最後にしますので、PAからも音を出します…」。【Take14】完奏。約1時間46分。

以上、完奏9テイクの中からベストテイクが選ばれてシングルになる。クリエイターらしいこだわりと彼女の繊細な感性が垣間見えるまさにドキュメンタリーな現場だった。その他の発見としては、彼女の生歌は本当に声が小さいのね〜ということかな（そういう唱法なんだけど）。
ただ、この日こういうマジなレコーディングを公開でやるスタイルになったのは単純に機材の関係で、平賀さん自身はお客さんにもサビのところを一緒に歌ってもらうような「ライブレコーディング」を希望してたみたい。大変貴重なものを見せていただきました。

開演19時33分→終演21時18分。

2012/04/26　OTOTOI GROUP、LOVE ME TENDER、平賀さち枝、曽我部恵一　渋谷 O-nest

viBirth×CINRA presents 「exPOP!!!!! vol.61」。チャージなし（2ドリンクオーダー）というイベント。ネットで応募するとすぐ予約が取れたので行ってみました。お目当ては平賀さち枝さん。無料イベントということもあってお客さんは多かったですね。いちばん多い時間帯は、ほぼ満員になってたんじゃないかな。

○「OTOTOI GROUP」　「オトトイ・グループ」。女性ボーカル/ギター、ギター/ピアニカ/タンバリン、キーボード/ギター、ベース/ボーカル、ドラムス…の男女5人組バンド。最初の曲は、こんなに人数いらないんじゃないか…という感じのすっきりしたサウンドだったけど、2曲目以降になると音の厚みが感じられるガツンとしたナンバーが続く。いちばん多い時には3人が同時にギターを弾いている。ざっくりいえばギターポップになるんだろうけど、全体に飄々とした空気感のある独特のサウンドである。ボーカルはちょっとハスキー気味、でも声のイメージは爽やか系…というこれまた複雑な味わい。MCで「昨日CDデビューしました！」と話してた。ヴィジュアルなどはいかにも中央線沿線っぽい雰囲気。それも吉祥寺じゃなく荻窪や高円寺だろうね。全6曲、約24分。

○「LOVE ME TENDER」　こちらも紅一点型の5人組バンド。女性ボーカル/ドラムス、キーボード、ギター、ベース、テナーサックス。男性陣は全員コーラスも担当。サウンド的にはフュージョン/シティポップ系の洗練された中に都会的な不良っぽさを練り込んだ感じ。「マリファナぐらい解禁してよ」的なメッセージの曲があったりね。また、途中2曲ほどインストナンバーがあるのも納得。ハマってる。キャリアの長そうなメンバーが多く、即興で曲っぽく仕上げてしまったりするのもお手の物。こういうバンドならボーカルも大人っぽい雰囲気なのが普通だろうけど、こちらは若干子供っぽい声質と唱法だった。でも、そのアンバランスさが不思議と印象に残ったりする。結果的にはしっかりバンドの個性になってるということなんだろうな。MCによると渋谷のご当地バンドらしくフロアにはファン多数。この日のイベントでいちばん盛り上がった時間帯となった。全7曲、約36分。

○「平賀さち枝」　アコースティックギターでの弾き語り。前のバンドとのノリの落差が激しい。でも、最初はなんとなく空気がザワついてた会場も、彼女が歌い出すといつの間にかステージに集中してしっかり聴く感じになる。セットリストは、「希望にあふれた雨雲でいっぱい」「今は帰らない」「江の島」「恋は朝に」「春が来そうでさびしいだけ」「目黒川」「パレード」「眠ったり起きたり」…の全8曲。
この日いちばん印象に残ったのは「江の島」。すごく軽やかなギター。以前どんなアレンジだったのか正確には思い出せないんだけど、アルバムが出てから弾き語りでのアレンジも少し変えたのかな…と思えるほど。アルバムバージョンのバンドサウンドも好きだけど、弾き語りもこれはこれでいいなと思う。「パレード」はライブで聴くのは2回目。やっぱりまだちょっとこなれてない感じは残る。他の曲が1年近く、あるいはそれ以上歌い込んできてる曲だから差があるのは当然かもしれない。でも、やっぱりもともとバンドサウンドを前提に作ってる曲だから、弾き語りで最適のアレンジが見つかってないのかな…という気もする。そんないろいろチャレンジしてる様子を聴けるのも、ファンとしては興味深い。そして、「春が来そうでさびしいだけ」を歌い終わった後のお客さんの拍手。「え？こんなに短いんだ…」という驚きと「でもかわいい曲…」という好印象がまじりあった反応も楽しかった。
MCはアルバムの紹介や翌日のタワーレコードでのイベント（公開レコーディング）のお知らせなど。お客さんが多くてステージの様子はよく見えなかったけど、髪をかなり短く切ってたのはわかった。イメージとしたらショートボブに近いぐらい？ そして衣装は青いカーディガン。「江の島」の海の色。しっかりマイペースのステージで良かったと思った。全8曲、約27分。

○「曽我部恵一」　トリは有名なこの方。ライブは初見。アコースティックギターでの弾き語り（1曲バンジョーに持ち替える曲あり）。MCなしでどんどん歌っていくんだけど、まあやっぱり上手いですよ。説得力があるというか。そして楽曲にもそれぞれ刺さるものがある。一曲ごとに、まるで短い舞台劇が展開していく感じ。歌詞の力もあるしね。楽器の使い方もさすがで、ただギターを伴奏楽器として弾いてるだけじゃなく、それ自体にも歌わせている。聴いているうちにどんどん引き込まれていくのがわかった。最後の曲をやる前にMCをまとめて。ここではとても親しみやすく、それまでのテンションの高い楽曲の世界から一転してホッとできる時間を作ってくれる。アンコール1曲あり。終盤はじっくり聴かせるミディアム曲中心だったけど、これまた聴き応えあった。全7曲、約41分（アンコール含む）。

前半がバンド、後半が弾き語りという構成。普通は逆のことが多いんだけど、この日はこの順番がハマってましたね。ちなみに2ドリンクの飲み方は、ウイスキーソーダ（ウイスキーのみダブル）という感じで。

開演19時07分→終演21時51分。

2012/04/20　chay、住岡梨奈、Rihwa、安田奈央、BLUETRIKE　渋谷 duo MUSIC EXCHANGE

女性ボーカルのアーチスト5組出演の「SPRING RECOMMENDS」。お目当てはchayさん。出演者の顔ぶれから椅子が出てるパターンだろうと思って少し早めに行ったのですが、ホールに入ってみると、なんとまさかのオールスタンディング。お客さんもさほど多くなかったし、できれば着席で見たかった…。

○「chay」　最初のステージのセッティングを見てると、ボディにハートマークをあしらったチャイさんのギターを発見。この日はトップバッターでの出演だった。会場内には複数のビデオカメラ。フロアにもレコ社関係など招待客らしき姿が目につく。売り込みにも力が入ってきてるみたい。
サポートバンドは、ギター、ベース、キーボード、ドラムス。chayさん自身はボーカル/ギター。5人でのステージ。セットリストは、「はじめての気持ち」「LOOP」「BUT」「together」「Again」…の全5曲。3月に同じ会場でやったライブからカバー曲を抜いただけで、まったく同じ曲目・曲順ということになる。
印象としては、前半はやや緊張感があり、そつなく歌ってはいるのだけど、同時に硬さも感じられる出来だった気がした。3曲目「BUT」はアコースティックギターからエレキに持ち替えて歌うブルース調のロックナンバー。ここで気分が変わったのが良かったのだろうか。後半2曲になると、歌にのびのびとした楽しさがはっきり感じられるようになる。4曲目「together」は、テレビのなでしこリーグ中継のテーマソングに決まったことも発表。「今、渾身のごり押し曲ですよ…」ということで、お客さんもクラップで盛り上げる。続く「Again」もマイナーコードの曲ながら、歌の響きが素直によかった。聴き手としても、彼女の曲の世界にすっと入っていける感じで、とても好印象だった。後半にきっちり盛り上げ、良い印象でステージを終えることができる…というのは、やはり「持ってる」のではないだろうか。爽やかな声質は聴いてて文句なく気持ちいいしね。
一方、MCに関しては、まだまだグダグダなところはあるかな。でも「そこがかわいい」と言ってもらえる親しみやすいキャラではある。衣装も春っぽいスカートとタンクトップで超爽やかだった。全5曲、約30分。

○「住岡梨奈」　「すみおか・りな」さん。ライブはこの日が初見。前半2曲はアコースティックギターでの弾き語り。後半3曲はバックトラックのような音を出すシンセ（TENORI-ON）がサポートで加わり2人でのステージとなる。
彼女の持ち味はやはり声量豊かなボーカルかな。MCでの話し声などは、どこか少女っぽい幼さを残した声なのに、歌い始めるとそのイメージががらっと変わる。とにかくパワフル。音域も相当広そうだ。きりっとした歌声がまず印象に残った。と同時に、力強く押すだけじゃなく、時に力を抜く歌い方もあると、もっと幅が出るのに…という気もしたな。サウンド面では、後半使ったTENORI-ONの幻想的なバックトラックの音が新鮮。シンプルなのに曲にぴったりあってて、空間の広がりを感じさせられる。こういう楽器があるのね〜。全5曲、約24分。

○「Rihwa」　「リファ」さん。ソロのシンガーソングライターで、ライブを見るのは約半年ぶり2回目。自身のボーカル/アコースティックギターに加え、ギター、ベース、キーボード、ドラムスの4Pバンドがサポート。5人でのステージ。
前回見た時も、アコースティックギターだけのサウンドだったにもかかわらず、非常にロックっぽい印象を受けた彼女。この日はばっちりバンドアレンジで、そのメリハリの効いたボーカルが非常に映えていた。オープニングから2曲はアッパーでノリの良い曲。まるで水を得た魚のようにのびのびと歌っている。2曲目は英語詞のナンバー。ギターのリフとハモンドっぽいキーボードが効いたアッパーなブルースだけどこれもいいな。3曲目はバラード。このあたりはサポートギターもアコギに持ち替え、全体的にアコースティックなサウンドになる。後半はお客さんもクラップで参加する明るく爽快感のある曲を連続で。起伏のある構成で聴き飽きない。そして、何といってもバンドの中央にいるリファさん自身の華のある存在感。ダイナミックなバンドサウンドは本当に彼女にぴったりだと思えたし、コンパクトだけど聴き応えがあり、彼女の実力を感じられるステージだったと思った。
MCでは、7月にメジャーデビューが決まったことを大発表。「本当に隠し事するのって大変ですね〜」と言ってたので、このステージがまさに情報解禁の瞬間だったみたい。前回見た時には札幌在住だった彼女だけど、現在はメジャー進出に備えて東京に拠点を移したようだ。さらに、TVK「SAKU SAKU」の月イチレギュラー決定の情報も。このへんのトークも本当にスムーズで上手い。さすがヴィンちゃんがレギュラーに起用するだけのことはありますよ。うれしい発表事満載のハッピーなライブとなった。全5曲、約30分。

○「安田奈央」　「やすだ・なお」さん。すでにメジャーデビューしてるソロシンガーだけど、予備知識なしでの初見。サポートはアコースティックギター/コーラス。2人でのステージ（安田さん自身はボーカルのみ）。
曲調はありがちなR＆B系とかではなく、ストレートなポップス。ニューミュージック的でもあり、ちょっとフォークっぽくもあり…という印象を受けた。ボーカルは声量豊かで、声質はちょっと有里知花さんとかを思い出すような深みのあるもの。ミディアムナンバーに持ち味がありそうだ。ただ、この日はバックトラックを使わない、アコギ1本だけの伴奏ということもあって、サウンド的な華やかさには正直欠けたかな。後でサイトにあがってたPVなどを聴いたんだけど、やっぱりこういう音楽はしっかりアレンジされたトラックとワンセットで聴きたい気がした。すでに彼女のファンという人にとっては、余分な装飾のない素の彼女のボーカルが聴けたステージだったかもしれないけど、（私のような）一見客にとっては、もう一つテンションが上がりきる前に終わってしまった感じ。実際、他の出演者に比べて少し短めのセットリストだったしね。全4曲、約22分。

○「BLUETRIKE」　「ブルー・トライク」。女性ボーカル、男性ギターの2人組ユニット。この日はサポートにベース、キーボード、ドラムス…を加えた5人でのステージ。MCによると、半年ほど活動休止した後の復活ライブだったみたいで、ステージ前にはけっこうファンが詰めかけていた。
曲調は明るい元気系ロックかな。ボーカルは高音域に持ち味がある。ジーンズにジャケット…というスタイルで、ちょっと中性的というか宝塚の男役っぽい存在感。けっこう応援ソングみたいな曲が多いので、そのへんで好みが分かれるかも…と思って聴いてたんだけど、後半になると徐々に慣れてくるのよね〜。応援系バンドらしくMCも熱い。アンコール1曲あり。全6曲、約34分（アンコール含む）。

お目当てのチャイさんが先頭で出てしまったので、後はわりとリラックスして聴いてましたね。リファさんのメジャーデビューはかなり納得という感じ。普段はまだ弾き語りでのライブが多いという話をしてたけど、やっぱり彼女の本領発揮はバンドスタイルでしょうね。機会があればまた聴いてみたいものです。

開演19時05分→終演22時18分。